「戦死」ではなく「公務死」? 自衛官、いまそこにある危機 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

「戦死」ではなく「公務死」? 自衛官、いまそこにある危機

このエントリーをはてなブックマークに追加
週刊朝日#安保法制
航空自衛隊のC130輸送機 (c)朝日新聞社

航空自衛隊のC130輸送機 (c)朝日新聞社

 こうした現実が目の前にたたきつけられるだけでも国民には相当に衝撃的な出来事だろうが、葬儀が終わっても、その後の戦死者の慰霊の問題が残る。現状の制度はどうなっているのか。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏が解説する。

「イラク派遣の際、自衛隊の『戦死者』を靖国神社に合祀(ごうし)できるかが真剣に検討されましたが、憲法の定める政教分離の規定などから不可能という結論になった。それで、東京・市谷の防衛省敷地内に大規模な式典も行えるような慰霊碑地区(メモリアルゾーン)が整備されました。毎年秋に行われる追悼式には、かつてほとんど出席しなかった首相が毎年、出席するようになっています」

 03年9月に完成した現在のメモリアルゾーンには、富士山をかたどった慰霊碑が立つ。初めて国費を支出し、老朽化していたそれまでの慰霊碑などを集約して拡張・整備されたものだ。ここに、1950年の警察予備隊創設以来、事故などによって殉職した1800人以上の自衛官の銘板が納められている。

 ただ、メモリアルゾーンは防衛省の敷地内にあるため、事前予約制の見学ツアーに申し込む以外は、一般人が自由に立ち入ることはできない。防衛省の広報によれば、殉職自衛官の遺族であっても、立ち入れるのは基本的に年1回の追悼式のときのみだ。

 国民にメモリアルゾーンの存在があまり浸透していない中で、自衛官の一部には「個人的には、戦死したら靖国神社に祀(まつ)られたい。(太平洋戦争時の連合艦隊司令長官の)山本五十六のそばがいい」(陸上自衛隊1尉)などと、靖国神社への合祀を望む意見も根強いようだ。

 靖国神社は今年8月、共同通信の取材に「今後戦死した隊員が出た場合でも合祀はしない」という見解を明らかにした。自衛官が生前、個人的に望んだ場合も合祀されないのか。京都産業大学名誉教授(日本法制文化史)で、靖国神社崇敬者総代の所功氏がこう語る。

「靖国神社は戦前、戦中は陸海軍、戦後は厚生労働省が認定した戦死者の名簿をもとに合祀をしてきた。今後もその原則を簡単に曲げることはないと思われ、たとえ個人が望んでも合祀はされないでしょう。現憲法下でできることを考えれば、今のメモリアルゾーンできちんと慰霊する以外の道はない。その原則のもとで今後、一般人も立ち入れるように規模を拡大することや、追悼式への天皇陛下のお出ましがかなう方法を模索するなど検討課題はあるでしょう」

週刊朝日  2015年11月20日号より抜粋


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい