注目されたのはやはり「慰安婦問題」だった(※イメージ)
注目されたのはやはり「慰安婦問題」だった(※イメージ)

 ソウルで11月2日、3年半ぶりに開かれた日韓首脳会談。安倍晋三首相と朴槿恵大統領の初会談とあって、韓国でも大きく報じられた。注目されたのはやはり「慰安婦問題」だ。

 メディアの評価は真っ二つ。現政権を支持する保守系は「両国間の立場の違いを再確認した、半分の成功」(中央日報)、「慰安婦問題を解決しようとした韓日首脳、関係改善の糸口は開いた」(東亜日報)と評価。一方、進歩系は「韓日首脳、言いたいことだけ言った」(京郷新聞)、「また先延ばしにされた慰安婦問題解決…韓日首脳、協議加速指示だけ」(ハンギョレ新聞)と批判した。

 韓国ギャラップの世論調査では、「会談に成果はあったか」の問いに、「成果なし」との回答が46%あったが、「わからない」と答えた人も31%いた。「慰安婦問題の協議を加速するとした日本政府は今後、態度を変えるか」には、「変えないだろう」が76%だった。

 ソウル市街で話を聞くと、「韓国政府は、安倍首相が慰安婦問題の解決策を示さなければ会わないと言っていたのに、米国に押されて原則を曲げた。結局、協議の加速化とはぐらかされた」(23歳男子学生)、「調整して会ったことだけでも評価しないと。会わなきゃ話にならない。これからのことはそのときにまた声を上げればいい」(65歳自営業男性)など様々な声が。

 韓国政府は「早期妥結」をめざすが、慰安婦問題解決に取り組む韓国挺身隊問題対策協議会は「早期妥結ではなく正しく解決されなければならない」と訴えた。李元徳・国民大学日本学研究所所長は言う。

「極端に悪化していた韓日関係を脱して会談を開いた点、これからのモメンタム(弾み)を作った点を評価します。外交で100点をとるのは無理。韓日関係は経済・安保・文化を慰安婦問題とは別に考え、慰安婦問題については年内の国際会議を利用して話し合いを重ねていくべきです」

 韓国の経済紙「ヘラルド経済」は今回の会談をチェスの「ステイルメイト」に例えた(11月3日付)。ステイルメイトとは次に動かす駒がない状態のこと。だが、駒を動かすには膝をつき合わせるしかない。

週刊朝日 2015年11月20日号