慢性膵炎の主な原因は、アルコールの大量摂取だ(※イメージ)
慢性膵炎の主な原因は、アルコールの大量摂取だ(※イメージ)

 急性膵炎(すいえん)で2度目の入院をしていたお笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんが10月、復帰した。膵炎は、膵臓が作り出す膵液で自らを溶かす病気。これを繰り返すのが慢性膵炎だ。新しく保険適用になった治療法で、腹痛が改善される。

 膵臓は、炭水化物や脂肪を分解する消化酵素を分泌している。本来、消化酵素を含んだ膵液は、膵臓の中では消化する能力がない。十二指腸に流れ込んでから活性化し、食べ物を消化する。

 しかし、何らかの原因で、膵臓の中で消化能力が活性化すると、膵臓自らを溶かす「自己消化」を起こす。この自己消化を繰り返すのが慢性膵炎だ。発作が起きるたびに、膵臓の正常な細胞は壊され、徐々に膵臓の機能は低下する。細胞は線維に代わり、膵臓全体が硬く縮まっていく。

 最初の症状は、腹痛や背中の痛みだ。慢性膵炎患者は、約半数に膵石ができる。この膵石が、痛みの大きな原因となる。慢性膵炎を患った佐々木真一さん(仮名・55歳)さんを担当した乾和郎医師は、こう説明する。

「膵管の中に膵石が詰まると、膵液の流れが悪くなります。膵液が滞り、膵管の内圧が上がるのが、痛みの原因です。絶食で膵液の分泌を抑えれば、一時的に痛みがなくなりますが、膵石があるかぎり、痛みを繰り返します」

 慢性膵炎の主な原因は、アルコールの大量摂取だ。男性患者の場合、アルコール性が約70%を占める。

 治療の基本は、禁酒や脂質の制限といった食生活の改善だ。腹痛には、たんぱく分解酵素阻害薬などの薬物治療をおこなう。たんぱく分解酵素阻害薬は、膵臓内で活性化する消化酵素の働きを抑え、炎症を鎮める。

 佐々木さんの場合、禁酒のうえで、膵石を取り除く必要があった。乾医師は、膵石を取り除くため、「体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)」をおこなった。ESWLは、衝撃波を発生させる装置で、からだの外から衝撃波を当て、膵石を細かく砕く方法だ。

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