室井佑月「被曝のせいではない科学的根拠をあげよ」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

室井佑月「被曝のせいではない科学的根拠をあげよ」

連載「しがみつく女」

このエントリーをはてなブックマークに追加
「子どものために万が一の安全策を取るよりも、大切なことってあるの?」

「子どものために万が一の安全策を取るよりも、大切なことってあるの?」

 共同通信社によると、その論文は、

「福島県が事故当時18歳以下だった約37万人を対象にした昨年末時点までの甲状腺検査の結果を分析。年間発症率は事故前の日本全体と比べ、20~50倍と算出した」

 津田教授は、

「事故後、福島県で見つかっている子どもの甲状腺がんの多くは被ばくで発症したものだ」

 とはっきり主張した。が、別の疫学専門家から、

「結論は時期尚早」

 との指摘があったとも、書かれていたっけ。

 津田教授は翌日、都内で開かれた会見で、このことについて怒っていた。日本の疫学専門家のこうした考え方は、非常識だと。なぜ、子どもたちを守りたい、そう真っ先に考えないのだ? 子どものために万が一の安全策を取るよりも、大切なことってあるの? なんのための研究なのか? 大金かけて整備して使わなかったSPEEDIと一緒だ。

 会見で津田教授は、今後予想される甲状腺がんの増加に備えて、

「考え方や情報発信のあり方を改めるべき」

 そう強くおっしゃっていた。あたしもそう思う。

 病気になってしまった人たちに「被曝の影響との科学的な根拠は?」という人たちには、逆に「絶対に被曝のせいではないという科学的な根拠をあげよ」というのだ。被曝も病気も、したくて、なりたくて、なったんじゃない。事故後、放出された放射線量をあげ、記者はそうした質問をしてくれ。

週刊朝日 2015年11月13日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい