難民ルポ「恐怖を感じずに眠れる国に住みたかった」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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難民ルポ「恐怖を感じずに眠れる国に住みたかった」

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ギリシャ領レスボス島に上陸を果たした難民たち。子供を抱く母親は、疲弊しきっていた(撮影/アンドロニキ・クリストドゥル)

ギリシャ領レスボス島に上陸を果たした難民たち。子供を抱く母親は、疲弊しきっていた(撮影/アンドロニキ・クリストドゥル)

 ギリシャを目指していたボートが沈没し3歳の男児が溺死したこともあって、関心が高まる難民問題。たとえ無事に海を渡れても、苦難の道は続く。それでも祖国を脱出する人々は引きも切らない。ギリシャ人女性カメラマン、アンドロニキ・クリストドゥルがその最前線に迫る。

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 ボートが岸に到着すると、30~40人の難民から大歓声が上がる。抱き合い、キスをし、神に感謝の言葉を捧げだした。

 ここはトルコから22キロしか離れていないギリシャ領レスボス島。シリア、アフガニスタン等からヨーロッパに向かう難民が上陸する島だ。到着すると彼らは港湾警察を訪ねる。そこで滞在許可を得て、フェリーに乗ってアテネに向かうのだ。

 シリアのアレッポで産婦人科医をしていたアルシェイクさんは、妻と5人の子供、妻の兄弟と母国を脱出した。

「ヨーロッパで医師として働けるとは思っていない。でも子供たちを戦火から守るため、この方法を取ったんだ」

 他にも多くの親が「子供の将来を考えて」と語った。

 ギリシャ行きのボートに乗るには、1人1千~1300ドルの手数料を密航マフィアに払わねばならない。私は、14歳の少年が1人でシリアを出たと聞いて驚いた。彼の家では、1人分の渡航費しか捻出できなかったからだ。彼は同じように1人で脱出した17歳の少年と旅の途中で出会い、行動を共にしていた。

 私が取材した難民の中で、ギリシャ滞在を望む人は1人だけ。9割はドイツへ、残りは北欧諸国へ行くことを望んでいた。そのためアテネに到着したら、今度はマケドニアとの国境を目指して移動を始める。

 だがバス代のない人は、市内のビクトリア広場で過ごしつつ、働いて資金を稼いだり援助を待ったりしなければならない。

 広場で出会った17歳の少女ザーラさんは、アフガニスタンから一家で逃げてきた。タリバーンが彼女を誘拐すると宣告したからだ。彼女は笑顔で言う。

「恐怖を感じずに眠れる国に住みたかった」

 ヨーロッパでの新生活が苦しいものになろうと、彼らにとっては母国で過ごすよりもはるかに良いのだ。

週刊朝日  2015年11月6日号


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