移住希望地第1位となったのは?(※イメージ)
移住希望地第1位となったのは?(※イメージ)

 リタイア後、都会から地方への移住希望者は年々、増えている。都市から地方への移住を支援しているNPO法人ふるさと回帰支援センターに、移住の相談をしたりしている人は2008年と比べて14年では5倍以上に増えた。そのうち約45%が50歳以上。定年退職を控え、リタイア後の移住の相談に訪れる人が多いという。

 同センターの調べで、移住希望地第1位となったのが山梨県だ。都内から150キロ圏内とアクセスが良く、八ケ岳山麓の別荘地などがある北杜市を訪ねた。

 人口約4万8千人で昨年の転入者数は約1600人。

 00年以降、その6割はシニア世代で転入過多とされるが、最近では異変が起きている。20年にわたって移住者に住宅を紹介しているふるさと情報館八ケ岳事務所の中村健二所長は言う。

「以前は別荘地の希望が多かったのですが、地域に根差した暮らしをしたいと、住民が多い地域への移住希望が増えています」

 そして地域のために活躍するシニア移住者が増えているというのだ。

 JR日野春駅から、山道を車で10分ほどで武川町の集落が現れる。この中心地にはこのあたりで唯一の医療機関がある。

 その裏手、「寄り合い所ふれあい牧」という看板がかかった、平屋建ての一軒家から笑い声が聞こえてくる。十数人の高齢者が体操をしている。続いて、みんなでテーブルを囲んでおしゃべりをしながら、おにぎり、自宅の庭でとれたウリのお漬物といったランチを楽しんだ。利用者は60~80歳代でほとんどが女性。市の介護予防事業として支援があるものの、スタッフ全員がボランティアだという。

 この「寄り合い所ふれあい牧」を7年前に立ち上げたのは、荻野八重子さん(69)。田舎暮らしをしたいと定年退職した夫が先だって移住、その後デイサービスでの介護職を定年退職した荻野さんも8年前に引っ越してきた。

「地域の人たちの役に立っているのが嬉しいし、最近では地元の人たちから体操の講師に呼ばれることもありますよ」(荻野さん)

 ふれあい牧などで知り合った地元の利用者たちから野菜や果物をもらうことが多く、夫婦2人の生活費は1カ月間で10万円ほどだ。

 利用者の一人は言う。

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