そのうちの一人は、30代のときに知り合った友人だった。近所に住んでいて、互いに単身という共通点もあった。しかし、若いころは話が合ったが、時を経て違う経験を積むにつれ、価値観のずれが生じていった。

「会っていると話は尽きないんですが、別れたあと、なぜか嫌な気持ちが残るんです。どうしてかな、と考えると、彼女はいつもお金の話をする。『本はどのくらい印税が入ったの?』『その宝石はいくら?』と。それがストレスになっていたんですね」(同)

 思い切って、彼女と連絡を取るのをやめてみた。メールが来ても返信をしない。もう一度来ても、返信はしなかった。すると、メールは来なくなった。

「すごく勇気がいるし、罪悪感も感じました。でも、思い切ってしまうと、すっきりするものです」

 付き合いを縮小させ、今は自分の趣味の時間を充実させている。大好きなシャンソンを3年前に本格的に習い始め、コンサートを開くほどに上達した。安保法制など政治について考える活動もスタート。活動に夢中になるうちに、新たな絆ができていた。

「好きなことに没頭していたら、新しい素敵な仲間ができたんです。政治や未来の日本を語れる若い人だったり、昔知り合った人との縁が復活したり。今は毎日が新鮮ですよ」

週刊朝日 2015年11月6日号より抜粋