北原みのり「なぜ、座らないのか」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「なぜ、座らないのか」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

タチションこそ、男の尊厳?(※イメージ)

タチションこそ、男の尊厳?(※イメージ)

 結局、男性は番組への協力として、1週間、座って排尿をする。タチションがなくなるだけで、トイレ掃除がぐんと楽になるのだが、実験後に「やはり、座りたくない」と妻の前で宣言するのであった。あからさまにがくっと肩を落とす妻の顔は、本気で暗かった。その暗さに気がついてか、夫は、休日は掃除するよ、と明るく話していた。

 ちなみに番組には、尿ハネ防止研究をしているアメリカ人男性2人も登場した。彼らは、外出時に自分の服が汚れるのがイヤだからという理由で研究を始めたという。そもそも自宅では「座ってやるよ」と、何のこだわりもない調子で答えていた彼らが、あまりにまともで、「男らしく」みえるのだった。

 タチションこそ、男の尊厳。そんなことを死守する男性がどのくらいいるのか、私には分からない。私の周りの男性は父親も含め、家では座ってする人が多かった。私はそれを単なる衛生問題と考えていたけれど、NHKの番組を見ている限り、尿ハネ問題は、ジェンダーの問題のようである。立ってしたい夫と、妻の壮絶な闘いは、決して珍しい話ではなく、日本社会によくある葛藤だ。尿ハネに留まらず、女の我慢を踏み台に保たれる男の尊厳なんて、無意味どころか、臭くて汚いだけなんじゃないかと私は思うけどね。迷走する「男らしさ」の行き着く先には、何があるのか。

週刊朝日 2015年11月6日号


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北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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