若者は地方をめざす?(※イメージ)
若者は地方をめざす?(※イメージ)

 いま、地方をめざす若者が増えている。リーマン・ショックや東日本大震災を契機に、「都会を離れ、地方で自分らしい暮らしがしたい」と考える若者が全国的に増え始めているという。

 全国的に早い段階で移住促進に取り組み始めた高知県。先行の移住者が、新たな移住者を呼ぶ動きが各地で見られる。

 2011年に東京出身の夫(39)と娘(7)を連れてUターンし、現在高知市内でデザイン事務所を営む町田美紀さん(40)も、次なる移住者を呼び寄せている一人だ。父が病気で倒れたことがUターンの最初のきっかけ。その後に起きた東日本大震災がやはり背中を押した。

「仕事も順調、大切な家族もいて、自分の生活はこのままずっと東京で続いていくものだと思っていました。でも、震災を機に、自分たちの住むべき場所は高知だと思った。子どもの成長のためには東京と高知とどっちが良いと思うの?と半ば強制的に夫を説得したんです」と笑う。

 東京時代から夫婦でデザイン事務所を営んでおり、Uターンしてからも東京の仕事を継続していたが、「これからは高知の仕事を増やそう」と一念発起。「地域では人脈が何より大事」と積極的に自分たちを知ってもらおうと動いた。夜だけ営業する飲食店をオープンしたのも、そうした人脈作りの一環だ。店を通じて出会った地元客から、商品開発やデザインの相談が舞い込むようになった。

 現在は、高知と東京を忙しく行き来する毎日だ。東京では、本業のデザイン業以外にも、県産の野菜などを販売するイベントを企画したり、県が企画する移住相談会で講演したりと、積極的にPRを買って出る。

 働き口がないなら、自分で仕事を作る。ベースは地方でも、都会にも拠点を持って働くことができる――。そうした町田さんの働き方を通じて可能性を感じ、実際に移住に踏み切るケースも出てきた。しかし、町田さんはこうも話す。

「私は、都会でがむしゃらに働いたことで自分のスキルが身についたと思っています。だから、早い段階で田舎に移住することを若い人に勧めたりしたくない。地方で自分らしい働き方がしたいと思っても、現実はとても厳しい。焦らなくても、きちんと能力を身につけてからで遅くないはず」

 また、単身ならともかく、家族で移住することのリスクは、自治体サイドももっと説明するべきだと強調する。

「移住しても、家族が食べていく資金もすぐには稼げないし、出身者でもUターンで地域になじむまでには最低3年はかかる。実際に、移住支援の担当者に強く引っ張られて移住したけれど、満足できてない人も結構います。そうした現実と理想のギャップの話も、移住支援の一環としてすべきでは」

 明治大学の研究室と毎日新聞が昨年12月に共同で行ったアンケートによると、13年度に地方自治体の移住支援政策などを利用して地方に移り住んだ人数は8169人で、4年間で約3倍に増えた。その中で特に目立ったのが、40代までの若い層だった。またNHKが13年度の移住者の年齢について15府県を対象に調べた結果でも、40代までの世代が全体の82%を占めた。

 各自治体で「移住者獲得合戦」が繰り広げられる今、手厚い支援制度や助成金などを使って、新たな生活をスタートさせようと考える若者も少なくない。

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