小嶋氏とヒューザーは事件後に破産。かつてはプライベートジェット機を所有するほど羽振りが良かったのに、今はマンションの清掃や管理で生計を立て、月収は約20万円という。小嶋氏は事件後も無実を訴え続け、今春には電子書籍『偽装──「耐震偽装事件」ともうひとつの「国家権力による偽装」』(金曜日)を出版。東京地裁へ再審請求をする準備をしている。

 当時、事件の中心人物であるかのように報道された小嶋氏だが、一審判決の量刑の理由には「ヒューザーは耐震偽装の被害者ともいえる」とも書かれた。著書では、建築確認をした検査機関が姉歯氏の不正を見抜けなかったことについて、<国の定めた「建築確認検査」の制度上の欠陥が招いた問題>

<私は、不本意な形ではあるものの、責任を取らされた。一方、国交省は、何の責任も問われていない。このままでいいのだろうか?>

 と疑問を呈している。

 今回の事件でも、偽装された杭のデータは法令上、提出の義務がなく、結果的に検査をすり抜けていた。

 小嶋氏の目には当時と似た構図に映るようだ。

「(事件当時の)姉歯の計算書は稚拙なもので、大臣認定ソフトで検算すれば簡単に分かったものを、検査機関はそのソフトすら持っていなかった。つまり何も審査していなかったのであって、検査機関業界の重過失でした。同様に、(今回の問題の検査機関も)中身は何も検査していなかったのではないでしょうか」

「国の責任は『耐震偽装』と同様に、何も問われないような法制度に整えられていると思います」(小嶋氏)

 国や検査機関の責任がどう問われるのかも、注視していく必要がありそうだ。

週刊朝日 2015年11月6日号