一挙にブームとなったラグビー。そんな盛り上がりを見て、丸山茂樹氏はゴルフを観戦する上での弱点を分析する。

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 米国選抜と世界選抜(欧州を除く)の団体対抗戦「プレジデンツ杯」が10月8~11日、韓国・仁川のジャック・ニクラウスGCで開かれ、米国選抜が6連覇を果たしました。2年前の前回大会に続く2度目の出場となった松山英樹(23)も奮闘したんですけどねぇ。

 アジアで初めて開催されたんですけど、1週間で約10万人ものギャラリーが足を運んだそうですね。まあ、世界選抜でプレーしたベ・サンムン(29)=韓国=がこの試合を最後に兵役に就くという背景があったにせよ、すごい人数ですよね。まあ、あれだけスーパースターが集まってますしね。

 それでもふと思うんです。もし日本で開催されてたとしたら、あそこまでたくさんのお客さんが来てくれたかな、と。やっぱりねえ、日本っていう国はゴルフへの執着心が薄い気がするんです。団体競技じゃないと、あんまり興味ないんじゃないでしょうか。

 そんなことを考えたのも、ラグビーのワールドカップ(W杯)があったからですね、きっと。

 いやあー、日本の戦いぶりに興奮しました。予選リーグで敗退しちゃいましたけど、過去7度のW杯で1勝しかできなかったのが、3勝1敗ですからね。まさにあっぱれですよ。僕もスコットランド戦以外はライブでテレビ観戦しまして、初戦の南アフリカ戦なんかは真夜中に熱狂しちゃいました。

 スコットランド戦だって、中3日じゃなかったら勝ってたんじゃないかと、いまでも思ってますよ。日本のように世界ランキング10位台の「2番手」チームは過酷な日程を強いられるんですってね。厳しい世界ですよ。

 
 それに何がうれしかったって、日の丸を背負って戦ってる外国人選手たちの気持ちですよ。日本国籍を取得した選手を含めて10人いたんですよね。彼らは日本代表を選ぶと、母国の代表ではプレーできなくなる。それでも「俺は日本代表として戦う」って言って、ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが課すハードな練習に耐えてきた。そこまで日本を愛してくれるなんて、うれしいじゃないですか。

 南アフリカ戦のあとに五郎丸歩選手が「ラグビーが注目されてる今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ」とツイートしました。まさにこういうことなんですよね。素晴らしいですよ。

 テレビで見てて思ったんですけど、さすが本場英国はラグビー専用のスタジアムばかりだから、グラウンドと観客席が近かったですよね。それでさらに盛り上がってる感じがしたんだと思います。

 ゴルフにはないシチュエーションなんですよね。ティーショット打って、セカンド打って、パターって、時間が長いじゃないですか。間延びするんですよね。ラグビーもサッカーでもそうだけど、瞬間瞬間で連動して、どんどんトライやゴールへ向かっていく迫力があるじゃないですか。あの感じ、ゴルフにはない。そういう競技なんだから仕方ないけど、ラグビーが盛り上がってるいまは、ちょっとうらやましいっすね。

週刊朝日 2015年10月30日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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