“農作業”でうつから社会復帰 院卒→IT企業31歳男性の場合

週刊朝日#健康
 今年6月の平日昼間。神奈川県藤沢市の田園地帯にある畑に、10人近くの男女が集まっていた。金髪、黒髪、白髪交じりから角刈りまで、雰囲気や年齢層はさまざまだ。彼らは「NPO法人農スクール」に通う生徒たちで、3カ月間、ここで農作業を習ってきたのだ。この日は少し雨が降っていたが、一際明るい表情を浮かべる男性がいた。ゆきおさん(仮名・31歳)だ。

「今日は最終日で、野菜を採り終えたらバーベキューをするんです」

 ゆきおさんは長靴で畑に入り、雑草の合間から細かいギザギザとした葉を選び、えいっと引き抜いた。すると橙色の人参がひょっこり姿を現した。

「小さいけど、いい色」

 服に泥がはねるのも気にせず、野菜を採り続ける。ゆきおさんは3月にスクールに入ったが、それまでの8カ月ぐらいは、自宅に引きこもっていたのだという。一時は人に会うこともできなかった。

「大学院を卒業してIT企業に勤めていたんですが、ストレスでだんだん行くことができなくなって……」

 きっかけは、上司から理不尽に注意されたことだ。

「仕事の効率の悪さを自分だけのせいにされて。それを受け流せず、うつになってしまったんです」

 頭痛がひどくなり、ストレスから過食して10キロも太り、意欲がなくなった。心療内科に通って薬も服用したが、結局、昨年7月に退職した。これからどうしよう……悶々とする中、ゆきおさんはたまたま雑誌で、うつには農作業がいいという一文を見かけた。

「そういえば、子供のころに土いじりが好きだったなと思い出して、農作業ができる場を探したんです」

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