田原総一朗「記憶遺産登録の『南京大虐殺』を日本は完全否定できるのか」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「記憶遺産登録の『南京大虐殺』を日本は完全否定できるのか」

連載「ギロン堂」

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(c)UNESCO photographerMichel Ravassard

(c)UNESCO photographerMichel Ravassard

 旧日本軍が南京に攻め込む前、中国側の総司令官は逃げ出していて、旧日本軍が南京城に攻め上ると軍人の姿はなく、数多くの軍服が脱ぎ捨てられていた。軍人たちは民間服に着替え、市民と混在していたのだ。

 どの人間が、どのようにして反撃するかわからない。そんな恐怖心もあり、軍人と市民の区別がつかぬまま、多くの市民たちを殺してしまったということだ。兵站部隊が遅れたため、食糧の略奪などが行われたとも言われている。東京裁判でも「南京事件」にことが及ぶと、被告である旧日本軍の幹部たちは抗弁のしようがなかったようだ。

 今回の登録について、日本の外務省は文書の「完全性や真正性」に疑問を呈し、「中立・公平であるべき国際機関として問題」とユネスコを批判した。

 確かに「世界記憶遺産」はユネスコの事務局が独自に運営していて、審議が公開されず、各国の意見が反映されないなどの問題はある。菅義偉官房長官は「中国はユネスコを政治的に利用している。過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調し、遺憾だ」と批判した。ここまでは至極当然だと納得する。

 だが、その後に「我が国のユネスコの分担金や拠出金について、支払いの停止などを含めてあらゆる見直しを検討していきたい」と言いだした。昨年度の日本のユネスコ分担金は約37億円(11%)で、米国が支払い停止中のために最大となっている。

 ユネスコは「心の中に平和のとりでを築かなければならない」とうたっており、分担金見直しの主張は行き過ぎで、逆に世界の信頼を失うことになるのではないか。

 日本人の研究者が示すように、4万人にせよ6万人にせよ大勢の中国市民が旧日本軍に殺されたのは事実なのである。

週刊朝日 2015年10月30日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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