なんとも寒々しい流れを変える術はないのか。進次郎氏の父・純一郎氏と共闘し、脱原発運動に取り組む河合弘之弁護士は語る。

「世界の潮流を見れば、脱原発と再エネの普及は表裏一体の関係。再エネが普及すれば、脱原発も実現する。ドイツやデンマークであれほど脱原発政策が進んだのは、国民や経済界が再エネに対し、安全で経済合理性もあると十分信頼しているからです」

 それにいち早く気づき、主張してきたのが小泉氏だと河合弁護士は言う。

 確かに、小泉氏が続けている全国行脚のルートを見ると、単に脱原発を訴えるだけでなく、再エネにゆかりの地を選んでいることがわかる。昨年11月には大分県の九州電力八丁原地熱発電所を視察。今年3月には福島県の太陽光発電会社「会津電力」の招きに応じて喜多方市内で講演した。

 6月には、鹿児島市七ツ島で京セラ子会社が運用するメガソーラー施設や、新潟市で県と昭和シェル石油が共同プロジェクトで運用する「新潟雪国型メガソーラー」を精力的に視察した。

 今月29日には新たに、北海道函館市で再エネについての講演を行う予定だ。

「函館から津軽海峡を挟んでわずか23キロ先には、建設中の大間原発がある。事故が起きたらあっという間に放射性物質が飛んでくるため、函館市の工藤寿樹市長が建設差し止め訴訟を起こしています。小泉氏の函館訪問はその激励の意味もあります」(事務局関係者)

 小泉氏の講演のタイトルは決まって「日本の歩むべき道」。再エネの普及が進めば、おのずと原発は不要になるという「道」を、一貫して指し示しているのだ。

 小泉親子が再び表舞台に躍り出る日は来るのか。『小泉純一郎・進次郎秘録』(イースト新書)の著書があるジャーナリストの大下英治氏がこう語る。

自民党も10年先を考えたら人材がいない。福島に誰よりも通った進次郎氏は、いずれ堂々と脱原発を主張し始めるでしょう。その点で方向性は純一郎氏と一致しているが、政治で親に頼ろうとは思っていない。進次郎氏は自分が中心になって古い自民党を内部から変えるつもりでしょうが、それでも変わらないなら党を去り、脱原発も主張の一つとする新党をつくることもあり得るかもしれない」

 小泉氏は9月に伊方原発の再稼働阻止のため、愛媛県松山市へ乗り込んで行った講演後、本誌に語った。

「進次郎は毎月、被災地へ出かけ、事故後の悲惨な状況をよくわかっています。私が原発ゼロだからと言って強制はしませんが、進次郎はよく私の講演を聴いているようですね。ああ、わかっているのかということで、あえて、言わないようにしています」

(本誌取材班=小泉耕平、上田耕司)

週刊朝日 2015年10月30日号より抜粋