治療は3回に分けて実施される。最初は右肺の下部、2回目に左肺の下部、3回目が左右の肺の上部だ。各回の治療は3週間以上間をあけることになっている。

 BTの治療を受ける場合、治療3日前からステロイド薬を服用する。加熱による刺激で気管支壁(粘膜)がむくみ、喘息発作が出やすくなるのを抑えるためだ。治療に伴うこの気管支粘膜のむくみは、1週間ほどで解消するという。

 全身麻酔で実施する施設もあるが、同院では気管支鏡を使用する前に、のどに局所麻酔をかけ、実際の処置の際には鎮静剤で意識がぼんやりした状態にして実施する。

 一人の医師が口から気管支鏡を気道に挿入し、目標とする気管支近くまで気管支鏡先端を到達させる。先端からカテーテルを目標気管支に到達させ、そこで、もう一人の医師が、カテーテルに付いた電極を広げて気管支壁に当て、65度で10秒ずつ通電して加熱。決められた肺のエリア内で、気管支鏡をできるだけきめ細かく移動させて、通電・加熱を40~60回繰り返し、約1時間で終了する。

 同院の場合、患者は各回の治療の前日に入院し、通常は治療翌日に退院となる。

 BTの実施施設はまだ少なく、同院のほか、近畿大学病院や国立国際医療研究センター病院など全国で13施設(15年9月末現在)。大島医師のもとでは、9月中旬時点で4人が3回の治療を終了し、1人が治療中、という段階だ。

「BTの評価には、一定期間の観察が必要ですが、今のところ、どの患者さんも、発作で緊急受診する頻度は明らかに減っています。このようなBTの効果は、少なくとも5年は維持されることが米国の研究で明らかにされています」(同)

 山本さんは3回の治療終了後、発作で緊急受診することはなくなった。今後、抗IgE抗体治療もやめることが検討され、普段の表情も明るくなってきた。

「BTにより、強い薬を減らしたり、やめたりすることができれば、その副作用への不安や、長期的には経済的な負担の軽減にもつながっていくでしょう」(同)

週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋