「以前、脱水症状を起こしているところを訪問看護師に発見されて救急車で運ばれたことがあるので、トイレの回数がわかるのがありがたい。体調の変化に早めに気付けば大事に至る前にケアマネジャーに連絡して必要なケアを頼めるし、仕事中に呼び出されるような事態も防げます」

 サービスを利用する前は、千葉県に住む姉と交代で電話をかけていたが、続かなかったという。

「今も週に1度は会いに行っていますが、滞在時間が短いため生活リズムの変化に気付くのは難しい。認知症が進むと昼夜が逆転するそうなので、真夜中に照明をつけていないか部屋の明るさも気をつけてチェックしています」

 こうした高齢者向けの見守りサービスは、行政の制度の不足を補う役割もあるようだ。遠距離介護を支援するNPO法人パオッコの太田差惠子理事長は、

「多くの自治体がペンダント型の緊急通報装置を無料ないし格安でひとり暮らしのお年寄りに提供していますが、いざという時に駆けつけてくれる人が近所にいなければならないなどの条件をクリアできず利用できない人もいます」

 と指摘する。一方、民間のサービスは使い勝手が良く、選択肢も豊富だ。しかし、企業が期待するほどには普及が進んでいないのが実情という。

 太田さんによると、見守りサービスの利用には意外なハードルがあるのだとか。子どもが、離れて暮らす年老いた親を心配して利用を勧めても、親の側が断ることが多いという。

「まだ元気だからそんなもの必要ない、と親御さんに拒否され契約に至らないケースを非常に多く耳にします。監視されている気がするとか、プライバシーが筒抜けになると心配する人も多いようです」(太田さん)

週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋