「医療事故調査制度」に懸念…(※イメージ)
「医療事故調査制度」に懸念…(※イメージ)

 医療死亡事故の原因調査を医療機関に義務付ける「医療事故調査制度」が、1日に始まった。だが、被害者遺族からは制度を懸念する声が上がっている。

「(院内調査は医療ミスを)子供の責任に押し付けている。私は絶対に許せません」

 東京女子医科大学病院(新宿区)で2歳の男児を医療ミスで亡くした父親が9月29日、厚生労働省で会見を開き、院内の事故調査には限界があることを訴えた。亡くなった男児は、昨年2月に同病院で手術を受けた後、麻酔薬「プロポフォール」を成人限界量の3倍近くも投与されていた。遺族は息子の死の真相を知るため、事実関係の調査を繰り返し求めてきた。

 遺族は院内調査で事実が歪められたと不信感を抱いている。問題は、昨年6月30日に同病院が公表した院内調査報告書の作成過程だ。遺族の代理人である貞友義典弁護士は言う。

「病院は報告書を完成させる直前に、被疑者となる医師やその刑事弁護人に報告書の案を見せ、文章を修正させた疑いがある。真実を究明する院内調査の結果は、刑事責任を疑われる医師や看護師らの利益にならない。なのに、刑事弁護人に手を入れさせたなら、許し難いことです」

 たとえば、当初の報告書案では、手術終了直後にICU(集中治療室)に移動したとき、男児は深い鎮静状態にあったと書かれていた。それを完成直前に削除しようとした形跡がある。深い鎮静では麻酔薬を大量に使う理由がないからだ。

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