北原みのり「過去を『巡礼』、記憶すべきもの」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「過去を『巡礼』、記憶すべきもの」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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「韓国に旅立つ直前、憲法9条違反とされる安保法案が採決された」(※イメージ)

「韓国に旅立つ直前、憲法9条違反とされる安保法案が採決された」(※イメージ)

 かつての日本と今の日本を、迷いなく真っすぐに一本の線で結ぶ「性」。男は女を買うもの、なぜなら男だから。女は男を慰安するもの、なぜなら女だから。そんな「文化」がここに、言葉として形として残されているのを目の当たりにすると、厳しい問いを突きつけられているように感じる。なぜ、私たちはここまで変わらなかったのか。

「巡礼団」は、日本の遊郭跡、米軍基地周辺の買春施設、そして現在もにぎわう韓国人相手の買春施設を巡り、最後に、ある場所を訪れる。

 00年、この街の性売買施設で火災が発生し、5人の女性が亡くなった。さらにその1年半後、やはり性売買施設の火災で13人の女性が亡くなった。どちらも、女性が生活する部屋には外側から錠がかけられ、窓には鉄格子、またはベニヤ板が貼られていた。逃げようにも逃げられず、20代の女性たちが亡くなった。当時の警察のずさんな対応も含め、あまりにも衝撃的なこの事件をきっかけに性売買防止法が制定されるようになり、また1度目の火災が起きた9月に、全国から女性たちが、この街を訪れるようになったのだ。

 街を歩く前、リーダーの女性がこう挨拶した。「記憶にとどめ、その証言者となりましょう」と。そのために、この「巡礼団」があるのだ、と。

 韓国に旅立つ直前、憲法9条違反とされる安保法案が採決された。戦前から変わらず続く「文化」と、国の形を力ずくで変えようとするものの正体は、同じ色をしているように見える。記憶を封じられると思っている。個々の声を封じられると思っている。私たちが忘れることを願っている。過去を「巡礼」する韓国の若者たちの背中を見ながら、私たちが記憶すべきものの輪郭をクッキリと与えられたように思った。

週刊朝日 2015年10月9日号


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北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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