司組長もその意を察しているのか、9月1日の定例会で発表した言葉の冒頭で、先人の組長の墓地に「お参り」したことを明記。「五代目先代姐、宅見組先代姐をはじめ、関係者の皆さんには私の不徳と遺憾の意を伝えたことを皆に知らせておく」と書いている。

「わかりやすくいうと、6代目山口組と神戸山口組は、お互い、正統性を争い、そのためには、先人のお墨付きがほしいということです」(同)

 司組長が渡辺芳則5代目組長(故人)の夫人を訪ねたらしいとのうわさが出ると、すぐさま神戸山口組の井上邦雄組長が夫人の信任を得たという話が流れる。激しい宣伝戦が展開されている。

 お墨付きを巡る動きは、ほかの暴力団組織にも広がる。9月5日には関東の指定暴力団住吉会の幹部が神戸山口組を訪問。すると、15日に同じく関東の指定暴力団稲川会の幹部が総勢15人で6代目山口組を訪れた。

 ある指定暴力団幹部は困惑した顔でこう話す。

「6代目山口組、神戸山口組、どちらからも『うちについてくれ』というオファーがあります。でも、山口組は割れたといっても、いちばん大きな組織。そう簡単に、どちらにつくと表明できません」

 抗争が激しかった時代と違い、法規制は厳しい。事件を起こすと、組のトップの責任が問われかねない。当面は水面下で静かな「抗争」が続くのだろうか。

週刊朝日  2015年10月2日号