ぼくの話にも明るい笑顔で応援してくれた丹野さん(左)。右は朝田隆さん(撮影/木暮誠)
ぼくの話にも明るい笑顔で応援してくれた丹野さん(左)。右は朝田隆さん(撮影/木暮誠)

 認知症であることを隠さず当事者本人が発言する機会が増えている。8月29日にあったNHKエンタープライズのフォーラム「認知症新時代 いきいきと暮らすために」では3人が登壇した。若年性アルツハイマー病の丹野智文さん、レビー小体型認知症の佐藤充博さん、それに軽度認知障害(MCI)で認知症早期治療実体験ルポ「ボケてたまるか!」筆者の山本朋史記者である。当日の様子をレポートする。

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 午後1時からの第1部は、ぼくと丹野さんの発言機会が多い。進行役のジャーナリスト、町永俊雄さんが丹野さんに医師から病名を告げられた直後のことを聞く。

「大学病院で若年性アルツハイマー病と言われましたが、病気についての知識がなかったのでインターネットで調べました。治る可能性は少ないとか2年後には寝たきりになるといったマイナス材料ばかり。1年間はほとんど毎日泣いていました。自然と涙が出てきて止まらなかった」

 丹野さんには子どもが2人いる。症状が進んだ場合、妻と子どもの支えになってほしいと「認知症の人と家族の会」に入った。

「自分と同じように悩んでいる人と話し、活動することによってつながりが生まれました。認知症というと暴力をふるう、徘徊するといった負の側面ばかりが報道されて、心配を抱えながら診断が怖くて病院に行けない状況の人もたくさんいます。恐れなくていい、と発信していけたらと思っています」

 よどみなく語る隣の丹野さんの言葉に聞き惚れていると、町永さんが「山本さんの場合はいかがでしたか」と振ってきた。

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