田原総一朗「震災被害を『創造』につなげる東北の姿に注目せよ」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「震災被害を『創造』につなげる東北の姿に注目せよ」

連載「ギロン堂」

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風評が、買いたたきの材料に…

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 またパネリストの一人が、なかば冗談めかした口調で、「東北地方に必要なのは復興ではなく新たな創造なのだ」と言った。東北地方は大震災以前からすでに斜陽になっていて、復興は斜陽に戻るだけだから意味がないのだ、というのである。

 宮城県の山元町でイチゴ農場を経営する岩佐大輝氏が、同じ意味のことを言った。

 彼は東京でIT企業を経営していたのだが、3.11大震災で実家に戻り、実家を含めて山元町の多くが津波の被害を受けたのを知って、山元町の復興を決意したのだ。山元町のメインの農業はイチゴの栽培だった。だが、実は山元町のイチゴ栽培自体が時代に取り残されたような斜陽状態であり、彼は「復興」ではなく、日本一のイチゴ農場を「創造」するのだと言った。

 さらに彼は「創造には破壊が必要なのだが、すでに破壊されているのでイノベーションを起こしやすい」とも言った。また、「山元町のイチゴ農場は時代遅れで生産性が低かったので、業績を上げるのが楽だった」と、あっけらかんとしていた。そして、見事にミガキイチゴという、1粒千円で売れる一流ブランドをつくり上げたのである。

 その意味では、福島は原発事故で破壊され、不幸ではあるが、創造の前提ができているとも言える。

 現に、福島県ではいま、世界最先端のロボット研究拠点をつくろうという「イノベーション・コースト構想」が進んでいる。具体的には福島第一原発に廃炉研究の拠点を設置するとか、楢葉町に廃炉作業用のモックアップ(原寸模型)を建設してロボットの試験をしようとしているのだ。福島県を最先端技術の拠点にする計画だ。マスメディアは復興の妨害をしないように気をつけるべきである。

週刊朝日 2015年9月25日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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