がん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた(※イメージ)
がん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた(※イメージ)

 安倍政権の成長戦略の目玉として掲げられた「最先端医療技術」。そのひとつであるがん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた。がん粒子線治療とは陽子線と、重粒子線(炭素イオン線)をがん細胞に照射する治療だが、さらに問題も起きている。早くも看板倒れとなってしまうのか。

 同じ粒子線でも、陽子線と重粒子線とではエネルギーの強さに大きな差がある。RBE(生物学的効果比)という指標で示すが、X線の1に対して、陽子線は1.1とほぼ同じだ。だが、重粒子線は2~3倍高い。がん細胞を攻撃する殺細胞効果が非常に強いが、同時に正常組織に与えるダメージも大きくなる。このため、重粒子線治療は従来のX線治療では起こり得ない重篤な後遺症を招いているという。

「難治性がんでも、腺様嚢胞(せんようのうほう)がんという長生きするがんがあります。唾液腺とか口腔内によく起きる疾患ですが、このがんにかかって重粒子線治療を受けた患者さんを診れば、その後遺症の重さがよくわかります。口を開閉させる筋肉や組織がダメージを受け、口がほとんど開けられなくなった人がいます。こうした重大な障害はブラックボックス化しながら、たまたま良好な経過をたどったケースリポートだけ取り出して、科学的なデータであるかのように言い募ってきた。その綻びが公になったわけで、もはや壊滅状態でしょう」(元慶応義塾大学医学部講師で、現在はセカンドオピニオン外来を開設する近藤誠氏)

 既存のX線治療なども進歩して効果が変わらないのなら、わざわざ高額の粒子線治療を選ぶ患者は少なくなるのではないか。

 特に重粒子線施設は海外でもドイツ、イタリア、中国の3カ所しかない。放医研は世界初の、冠たる治療施設である。今回、取材を申し込んだが、次のようなメールが返ってきた。

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