08年7月に史上最高値、1バレル=147ドルをつけた原油価格だが、今はそのときの3分の1程度だ。炭鉱のカナリアだとすると、やはり、世界恐慌あるいは金融パニックが起きる不安は払拭できない。高田氏は世界経済のパラダイムシフトが起きているとして注意を喚起する。

「新興国の景気拡大にかげりが見える一方で日米欧は緩やかな回復基調に入るという新たな局面を迎えている。これまでのように過度に中国への輸出に依存するわけにはいかない。そういう意味で意識の転換が必要だ。今年の世界経済の脆弱性は米国の回復だけに依存する形になっていること。消去法的に期待がかかるのはわかるが、米国もまだまだバランスシート調整からの病み上がり状態だ。中国政府が出す経済指標はGDPなど信用できないので、中国経済がどのくらい悪化しているのか、世界中が疑心暗鬼になっている」

 米国の景気回復の象徴として、ずっと市場関係者の間にくすぶっているのが9月利上げ論だ。中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は早くゼロ金利から脱却して次の金融危機に備えておきたいと考えている。しかし、米国が利上げに転じると、これまでFRBが金融緩和で市場に流してきた大量のマネーがFRBに吸い戻され、投資先だった新興国の通貨や原油はさらに大幅下落する可能性が高い。それこそ世界大恐慌の引き金を引きかねないのだ。

「米はインフレではないので焦る必要がない。9月の利上げはないのでは」(高田氏)

 今のところ、9月利上げ論は少数派で、年内の利上げの可能性が高いと考える向きが大勢を占めるが、実際のところは不透明だ。

週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋