「できれば、1カ月に2回程度は訪れてほしい」

 と中村寿美子さん。

 経験したケースでは、親の入居先に頻繁に足を運んでいた家族が、1週間以上入浴サービスを受けていないことを発見したこともあったという。

「これは単なる入浴リストの記載漏れでしたが、よく遊びに行っていた家族の『おばあちゃん、におう』という気付きがあったから、わかったことです」

 もし虐待が現実のものとなったらどうするか。

「私だったら、すぐにその施設から移します。家族を守るのがいちばん大事ですから」(中村寿美子さん)

介護・福祉系法律事務所おかげさま」の外岡(そとおか)潤弁護士はこうアドバイスする。

「監視カメラの映像が動かぬ証拠になります。目撃情報だけでは、なかなか警察は動いてくれません。プライバシーの問題もありますが、疑いがあれば設置したほうがいいでしょう」

 さらに、高齢者虐待防止法に基づき、自治体に報告する。

 監視カメラ設置については、『崩壊する介護現場』の著書もあり、介護現場に詳しいノンフィクションライターの中村淳彦さんも最終手段として賛成する。

「今回の川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」での虐待事件が明るみに出たのは、その様子を映像に残したところが大きい。有料老人ホームは基本的には個室なので、家族がカメラを設置しやすい。お泊まりデイサービスのような大部屋だったら発覚しようがない」

 施設を移った場合、支払い済みの入居一時金は返してもらえるだろうか。

「入所後90日以内の退去なら戻ってきますが、それ以降だと償却されてしまうことが多い。ただ、刑事訴訟で虐待が認められた後に民事訴訟をすれば、入居一時金なども取り戻せる可能性があります」(外岡弁護士)

 終のすみかで、心安らぐ人生の残照の日々を過ごすはずが……。ブラックホームの犠牲者にならないためにも、自衛を迫られる時代が到来している。

週刊朝日  2015年9月25日号より抜粋