妊活のストレスで更年期障害に?(※イメージ)
妊活のストレスで更年期障害に?(※イメージ)

 神奈川県に住むタクシー運転手の佐藤昭三さん(仮名・59歳)が、不調を感じるようになったのは約3年前。からだがだるくて仕事をしていても疲れやすく、早めに仕事を切り上げる日々が続いていた。精神面でも不安感があって眠れず、何をするにもおっくうだった。そこで近所の心療内科を受診したところ、抗うつ薬と睡眠薬を処方された。ところが服用して半年経っても改善せず、薬の量や種類が増えていった。

 ほかの病気の可能性を心配した妻がインターネットで調べたところ、佐藤さんの症状は男性更年期障害の症状と一致するところが多くあった。そこで男性更年期障害を専門的に診療している昭和大学藤が丘病院泌尿器科を受診した。

 よく知られている女性の更年期障害は、閉経前後の10年の間に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで、のぼせやほてり、発汗、動悸、冷え、不眠、疲労感、イライラ、不安、無気力といった、さまざまな症状があらわれる。

 一方、男性更年期障害は、代表的な男性ホルモンであるテストステロンが減少することで、女性の更年期障害と同様の症状のほか、性欲や勃起力の減退、頻尿などが出現する。さらに女性の更年期障害と大きく異なるのは、発症時期が特定されていないことだ。佐藤さんを診た泌尿器科教授の佐々木春明(ささきはるあき)医師はこう話す。

「テストステロンの数値は個人差が大きく、80代でも30代くらいの数値を保っている人もいます。また、発症年齢にも個人差があり、30代で発症する人もいれば、70代で発症する人もいます。男性は20歳をピークにその後緩やかに減少していくため更年期の期間が幅広いのです」

 このような理由から更年期という自覚がないまま、不調に悩まされる場合が少なくない。また、男性はテストステロンが緩やかに減るため、からだが徐々に順応し、閉経前後に急激にエストロゲンが減少する女性よりも症状が出にくいとされている。しかし過剰なストレスがかかると、急激にテストステロンが減少し、症状が出やすくなる。

「30代以降になると子づくり、子どもの受験、親の介護など家庭でのストレスを抱えやすく、仕事においても責任ある立場になり、ストレスが大きくなっていきます。ストレスがあっても上手に発散できる人は症状が出にくいのですが、ため込んでしまうと症状が出やすいのです」(佐々木医師)

週刊朝日 2015年9月18日号より抜粋