プログラムでは犯罪に向き合わせる100分間の指導を週1~2回、3~8カ月続ける。法務省によると、現在、プログラムを実施している刑務所は19カ所で、仮出所後の保護観察期間も継続して指導をしている。ただし、保護観察期間が終わると、指導を強制的に受けさせることはできなくなってしまう。

 同省は、07年7月から11年12月までに出所した2147人を対象に、再犯について追跡調査をしている。再犯までの期間は平均で296.8日で、性犯罪者の再犯は224人だった。

 そのうち、性犯罪者処遇プログラムを受講した受刑者(受講群)と受講していない受刑者(非受講群)との差はどうか。受講群のほうが、入所回数が減り、出所時年齢が低く、仮釈放率が高いなどの差があった。

 ただ、単純比較ができないのは、非受講群は、累犯者の中で受講を拒否した人や、テキストを読み込めないほどの知的な問題がある人などが含まれている。それでも法務省の矯正局成人矯正課の担当者は、

「プログラムの導入で再犯率が低くなっているという実感がある。再犯をゼロにするのは難しいが、再犯までの期間が長ければ、被害者も減ります。全体としては間違った方向ではない」

 との認識を示している。

 NPO法人「性犯罪加害者の処遇制度を考える会」の代表理事で、精神科医の福井裕輝医師は、日本の再犯防止策は「欧米に比べて30年は遅れている」と話す。

「日本では性犯罪者を性的嗜好(しこう)の病気として診断し、ホルモン剤を投与したり、認知行動療法をしたりすることは保険適用にはなりません。再犯をした人は、継続していた治療が切れてしまった人が多い。病気であるにもかかわらず、本人の動機付けだけに任せていては、再犯のリスクを減らすことはできない」

週刊朝日 2015年9月18日号より抜粋