より早い治療がより治療効果を高める
より早い治療がより治療効果を高める

 脳の血管が突然詰まる脳梗塞。血流が途絶えた領域の脳神経の機能が失われ、片まひや言語障害などが起こり、重症だと命にもかかわる。治療は、血管に詰まった血栓を薬剤で溶かすことが第一、さらに器具を使い血栓を回収する方法も選択肢が増えてきた。

 東京都中野区の鬼頭弘さん(仮名・51歳)は1年前、自宅のトイレで倒れ、家族の通報により、東京警察病院に救急搬送された。半身がまひし、言葉が話せない状態だった。

 同院脳卒中センター長の佐藤博明医師は、CT(コンピューター断層撮影)やMRIによる画像検査で超早期の脳梗塞を確認。管に詰まった血栓を溶かす薬「t‐PA」(組織プラスミノゲン・アクチベータ)の静脈注射を検討したが、持病による消化管出血などがあったため、ただちに血栓回収療法に切り替えた。これは、太ももの付け根から血管内にカテーテルを挿入して脳血管まで到達させ、先端の装置によって、詰まっている血栓を回収する治療法である。回収装置の動きは、すべてX線画像で確認しながらおこなう。

 治療は、局所麻酔で実施することが多い。

「患者さんが動いてしまう問題はありますが、患者さんが話せるようになったり、腕を動かせるようになったりすることを確認しながらできるのが局所麻酔の大きなメリット。治療時間を短縮し、できるだけ早期に血栓を回収して血流を再開させることが重要です」(佐藤医師)

 回収機器にはいくつかの種類があるが、現在は、ステント(血管などを広げる医療機器の総称)タイプの「ソリティア」という機器を使うことが事実上の第一選択になっている。これは、カテーテルを脳血管内の詰まっている部位まで到達させ、網の目・シート状のステントを広げ血栓に食い込ませた後、引き抜いて血栓を回収するものだ。

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