GPIFを所管する塩崎恭久厚労相 (c)朝日新聞社 @@写禁
GPIFを所管する塩崎恭久厚労相 (c)朝日新聞社 @@写禁

 8月下旬、中国が発端と言われる世界的な株安が騒ぎとなった。

 株価暴落がシャレにならないのは、アベノミクスの切り札として市場につぎ込まれた国民の年金が、パーになるおそれがあるからだ。

 安倍首相は昨年1月の「ダボス会議」で成長戦略の一環として、厚生年金、国民年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の資産構成を見直すと宣言。同年10月末にはGPIFが、資産構成のうち日本株と外国株の比率を倍増させ、計50%にすると発表した。

 GPIFは約140兆円もの資産を持つ「世界最大級の機関投資家」。今年6月末時点の資産構成では、株式の比率は昨年9月末時点の約36%から約46%に上昇しており、実に10兆円を超える巨額の年金マネーが一気に株式市場に流れ込んだことになる。

 これが昨今の2万円を超える株高に一役買ったことは疑いないが、怖いのは今後あり得る本格的な株価暴落だ。国会でGPIFについて追及してきた元財務官僚の岸本周平衆院議員(民主党)が語る。

「約10兆円の損失が出た08年のリーマン・ショックのときから株式の比率を倍にしたので、今度は20兆円規模の損失が出てもおかしくない。株式市場とは本来、不安定なもので、年金のような虎の子の資金はリスクをとらずに運用するのが常識なのに、資産の半分が株式というのはむちゃくちゃ。株価と連動する支持率を維持するため、年金資金を利用した安倍政権の罪は重い」

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