かつて結核は“不治の病”と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった(※イメージ)
かつて結核は“不治の病”と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった(※イメージ)

 かつて結核は“不治の病”と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった。しかし日本はいまだ毎年約2万人の新しい患者が発生し、2千人以上が亡くなっている。

 結核の多くは治るようになったが、根治が難しい「多剤耐性結核」もある。多剤耐性結核とは、特に強力な抗菌効果を持つ薬、イソニアジドとリファンピシンの両方に、菌が耐性を持つ場合を指す。

 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター・感染症研究部長の露口一成医師は、

「日本では結核患者のうち約0.7%が多剤耐性結核患者だと言われています。最初から多剤耐性菌に感染した人もいれば、服薬中断や不適切な薬剤選択が原因で治療中に多剤耐性化してしまった人もいます」

 と話す。

 主軸の2剤が使えないため、これ以外の抗結核薬や、結核薬として承認されていない一般的な抗生剤や注射剤などを組み合わせて治療してきた。ところが治せずに死亡したり、長期入院を余儀なくされたりする患者もいる。

 しかし14年9月、こうした患者にとって大きな希望になる抗結核薬「デラマニド(一般名)」が発売された。国内で結核の新薬が登場するのは、約40年ぶりだという。

 デラマニドは、結核菌の細胞壁を構成する脂質「ミコール酸」の生成を妨げるという、従来の薬とは異なる仕組みで抗菌効果を発揮する。

 日本や米国など世界9カ国17施設が参加した臨床試験では、多剤耐性結核の標準治療にデラマニドを上乗せして投与すると、偽薬を上乗せした場合に比べて痰の中の菌の消失率が明らかに高いことが確認された。また標準治療とデラマニドを6カ月以上併用すると、死亡率が低下することもわかっている。

 大阪府在住の加藤由梨さん(仮名・35歳)も、デラマニドの効果を実感した一人だ。

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