「半年間きちんと薬を飲めば、9割以上の人が治ります。ところが治療の途中で服薬をやめてしまったり中途半端に薬を飲んだりしていると、薬に耐性となった『多剤耐性結核菌』が出現してしまうことがある。こうなると治療が難しくなってしまいます」

 厚生労働省によると、2014年に新たに結核を発病した人は2万人近く。前年度よりやや減少したものの、人口10万人あたりの新規結核患者数を示す罹患率は、欧米の先進国よりも格段に高い。日本ではまだ過去の病気とは言えず、静かに蔓延(まんえん)しているのだ。

 永井医師はこうアドバイスする。

「結核の症状は咳や痰、発熱など風邪の症状によく似ているため、自分で『たいしたことはない』と決めつけて受診しない人も少なくありません。また受診しても医師が結核を疑わず、診断や治療が遅れるケースもある。放置している間に症状が悪化するばかりでなく、周囲に感染させてしまう危険もあります」

 では、どうしたら早期発見できるのだろうか。

「咳などの症状が2週間以上続く場合は、必ず受診して胸部X線写真を撮影してもらいましょう。また無症状のまま職場健診で見つかることもあるので、毎年の健診は欠かさず受けるようにしてください」(永井医師)

 さらに永井医師は、感染症を広げないために、咳やくしゃみをするときに口を覆う「咳エチケット」が大事だと強調する。

「自衛のためにマスクをしていても、結核菌は市販のマスクだと通り抜けて入り込んできます。体調不良を自覚しているみんなが咳エチケットを心がけるだけで、結核だけでなくインフルエンザ、風邪などの感染症が広がるのをかなり防げるのではないでしょうか」

週刊朝日 2015年9月4日号より抜粋