鎌倉ハム富岡商会に残る、「チキンライスの素」のラベル版下
鎌倉ハム富岡商会に残る、「チキンライスの素」のラベル版下

 2005年に発行された昭和女子大学近代文化研究所の『チキンライスの日本史』というブックレットによれば、西洋野菜のトマトを普及させる過程で、ヒット商品が現れた。大正時代に鎌倉ハム富岡商会が売り出した、「ハムライスの素」という商品。その「姉妹品」として、「チキンライスの素」が発売されたという。

“ハムライス”。チキンライスのお兄さん・お姉さん的存在らしいが、新たな謎の料理が現れた。どんな商品だったのだろうか、鎌倉ハム富岡商会に聞いた。

「ハムを中心に、ソーセージなど肉を使った缶詰を戦前に発売していました。『チキンライスの素』も、そのひとつだったようですね」

 と、鎌倉ハム富岡商会企画室室長の秋本宣治さんが言う。どちらもトマトベースの味の調理用缶詰だったが、鎌倉ハムの商品だけに、まずハムありき、鶏肉を使うチキンライスの素は、そのおまけだったようだ。

 どちらの“素”も、戦後は生産されず、富岡商会には現在詳細なレシピは残されていないが、社に残る商品ラベルの版下に、材料が書かれている。

<鶏肉、筍、トマトソース、玉葱、青豆、味の素、脂肪香料など>

 どうやらタケノコ入りだったようだ。

次のページ