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 三上博史さんは10年ほど前、「そろそろ役者も潮時かな」と思ったことがあるという。

「それまでは、“次はこんな役を”とか、“こんな作品を”“こんなスタッフと”などと、自分なりにプランを立てながら取り組んでいました。それが、役者の仕事は自発的なものではないことに気づき始めて……。自分だけでは何も生み出せない、でも何か生み出したいという、ジレンマに陥ってしまったのかなぁ……」

 友人に誘われ、ついていったオーディションで寺山修司さんに見いだされたのが15歳のとき。「お前は映像向きだ」と言われ、1980年代に数本の舞台に出演した以外、舞台とは何となく距離を置いていた。「役者も潮時か」と思い始めた頃、「寺山さんの残党たちと」一緒に、パルコ劇場で舞台を上演することに。

「その頃からですね、自分自身をできるだけ人に明け渡すようにしたのは。舞台では、自分が指を一本動かし、一言言葉を発したときに、観てくれる人の人生が少しでも変わる可能性があるところが刺激的だと思う。もちろん、そんなことは幻想かもしれないけれど、15歳の頃寺山さんから教えられた、“人の価値観は無限であること”と“想像力は鳥よりも高く飛べること”っていうのは、ずっと信じていきたいんです」

 劇場空間には、不可能など存在しない。観る側が、自由に想像力の翼を広げればいい。そう考えるからこそ、自分が抱えるリアルは、本当は情報として流したくはないのだとか。

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