葉の緑と白のコントラストが美しい水晶斑入(撮影/写真部・加藤夏子)
葉の緑と白のコントラストが美しい水晶斑入(撮影/写真部・加藤夏子)

 江戸時代の文化・文政期に一大ブームとなった変化朝顔。江戸の粋人たちが夢中になった珍花奇葉の世界は今も受け継がれている。

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 夏の朝に彩りと涼しさを届けてくれる朝顔。可憐な花も魅力のひとつだが、中には朝顔とは思えぬ、妖艶な花弁を開かせるものがある。それが「変化朝顔」だ。

 江戸時代の文化・文政年間(1804~30年)に変異種が現れ、異形を好む江戸の粋人の間でブームになった。植木屋は広告のために版画を刷って配り、栽培を競った。特に珍しい花や葉をつけるものは高値で取引され、中には一株50両(現在の価格で約300万円)もの値を付けるものもあったという。

 変化朝顔は名付けも独特で、嘉永年間(48~54年)、花や葉の見たままを名前にする「見立て名」という方法が確立され、今に受け継がれる。例えば、「黄柳葉紅紫采咲牡丹」。「黄色い柳のような葉、紅紫色で、武将が持つ采配に似た牡丹のような朝顔」の意だ。

「朝8~10時頃に花が大きく広がり、美しく見えます。見ごろは8月中旬から。さまざまな種類が一斉に咲き始めるこれからが一番のシーズンです」と変化朝顔研究会の石黒和昭さん。

 8月28~30日には東京・日比谷公園で展示会が開催される。うだるような暑さが続く夏。少し早起きをして、変化朝顔見物と洒落込むのも一興だ。

週刊朝日 2015年8月21日号