痛みは我慢せず、早期に対処することが大事(※イメージ)
痛みは我慢せず、早期に対処することが大事(※イメージ)

 かつては、原因がはっきりとわからない慢性腰痛は時間の経過とともに軽快するのを期待するしかなかった。しかし痛みは我慢せず、早期に対処することが大事だと、日本大学板橋病院麻酔科・ペインクリニック科の加藤実(かとう・じつ)医師は話す。

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 これまで「痛みは病気のサイン」と考えられ、痛みを軽減するには、原因となる病気を治療すればいいと考えられてきました。しかし実際には、「検査で異常がないと言われても、痛い」「治療をしてケガは治ったのに、まだ痛い」ということが多々あります。近年、そうした痛みを引き起こすメカニズムが少しずつ解明され、痛み自体が病気だという概念が浸透。そして、痛みそのものを何とかしようと、痛み治療の内容も大きく変わってきたのです。

 痛みを引き起こす病気が見つからない慢性腰痛の大半は、急性の痛みによく効くNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬・商品名ロキソニン、ボルタレンなど)では、あまり改善しません。そしてNSAIDsが効かなかった場合、治療をあきらめるしかありませんでした。しかしトラマドール(商品名トラマール)などの弱オピオイド薬やプレガバリン(商品名リリカ)など近年、痛みの治療で使える薬の選択肢が増えました。

 腰痛に限らず、慢性痛に悩まされていて、処方された薬を飲んでも軽快しない場合、その薬が自分の痛みのタイプに合っているのかどうか、主治医に確認するとよいでしょう。

 日本には「耐えることが美徳」とされる文化があり、多少の痛みなら我慢しようと考える人が、まだ少なくありません。しかし痛みを我慢していると、痛みにより敏感になり、痛みを抑えようとするシステムも働きにくくなります。その結果、痛みの程度が強くなったり、痛みを感じる範囲が広くなったりすることもあります。

 こうした痛みの悪化を避けるため、日常生活に支障が出る痛みを感じたら運動、薬物、神経ブロックなど手段は何を用いてもよいので、今目の前にある痛みを和らげることを考えましょう。ただし痛み治療の目標は、痛みをゼロにすることではありません。痛みを軽減し、「痛みがあってもできること」を増やし、日常生活の改善を目指します。

週刊朝日  2015年8月14日号