IT分野でも、県は民間企業と共同で、国際的なインターネット接続拠点(GIX)の構築を進めている。従来は東京から米国経由で香港へつながっていた通信を、沖縄―香港を結ぶなどして、通信速度は数倍に。回線距離が短いので、大量のデータも送りやすく、通信システムを多用する金融・証券業界はもちろん、ゲーム業界などにも可能性は広がり、IT関連企業は02年の52社から、14年は実に7倍近い346社まで増加。県の目玉産業のひとつになりつつある。

 従来の観光産業だけではない、新たなビジネスチャンスの創設──。それは「脱基地」後を見据えているからこそだ。

 琉球新報論説副委員長の普久原均氏は、

「基地がなくなると、県の中心部に突然、広大な更地が登場するという非常に珍しい事態となる。土地は民間が使用したほうが経済効果は大きい。どう活用するかは、沖縄の将来を左右する。何らかの仕掛けをして、外貨を稼ぐ仕組みをつくっておくことはとても重要だ」

 と、県の取り組みを評価。観光地としても「他の東アジアの観光地より、幼い子どもを連れて安心して旅行できるのが沖縄。さまざまな面でポテンシャルの高さがある」と話す。

 だが、それでも根強いのは「沖縄は基地で食べている」という論調。翁長知事は7月29日、都内であったシンポジウム「いま、沖縄と本土を考える」(朝日新聞社主催)でこう訴えた。

「基地を置いて、振興予算をもらえばいいという考え方が、いかに沖縄の人を傷つけてきたことか。本土復帰後、沖縄が予算を他の46都道府県より多くもらっているというのは誤解です。国庫支出金と地方交付税の合計額も全国17位(人口1人あたりでは6位)です」

 県内のGDPに占める基地関連収入は終戦直後は50%だったが、その27年後に本土復帰したときは15%。現在は5%しかない。

 翁長知事が「いまや米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因」と言うのは、もっともなことなのだ。

(本誌・古田真梨子)

週刊朝日 2015年8月14日号より抜粋