いったい、何がいけなかったのか。住宅ローンや生命保険料など、月々決まって出ていく固定費を削れば、その節約効果はずっと続く。このシンプルな原則に気づかなかったのが、「転落家族」の最初の失敗だった。

 支出がかさむ子育て期こそ家計改善に取り組むべきだったのに、「子どもが独立すれば楽になる」「退職金が入れば大丈夫」と安易に考え、出費を放置した。夫の収入は限られているため、妻が働くのも一つの方法だが、妻が専業主婦を貫き、収入を増やして貯蓄に回すこともしなかったのが第二の失敗だ。

 大型出費への備えもなく、500万円かけて自宅をリフォームした66歳の時点で、預貯金残高はマイナス1千万円を突破。年金生活も月々5万円の赤字で、毎年60万円ずつ負債が増えていく計算になる。

 転落家族の基本生活費は、年金暮らしでも現役時代と変わらないままだ。蓄えがないうえに、収入に見合わない暮らしを続けていては、家計が破綻するのも当然だろう。

 こうした「転落家族」にならないようにするためには、どうしたらいいのだろうか。

「老後破産を回避するには、年代ごとの家計のリスクを克服することが重要です。50歳からの意識の持ち方や各年代にふさわしい家計管理をおこなうことで、老後も安心の『安泰家計』への道が開けてきます」(藤川さん)

 冒頭で藤川さんが言ったように、人生にはお金の「使い時」と「貯め時」がある。

 住宅ローンや教育費などの支払いがかさむ50代前半は、人生で最も出費が多い「使い時」だ。こんな時こそ住宅ローンの借り換えや生命保険の見直しなどで固定費を削減し、家計のリストラに着手しよう。50代前半に家計をスリム化しておくと、リタイア後の収入の急減にも無理なく適応できる。

(週刊朝日ムック「50歳からのお金と暮らし」より構成)

週刊朝日   2015年7月31日号より抜粋