開廷から4時間半超。ようやく証言台に立った勝久氏は当初、「久美子が言うんだったらと、信頼していましたから」などと弁護士の質問に淡々と答えていたが、次第にヒートアップ。

「大塚家具には1700人の社員がいる。家族の会社とは思っていない。社員も子どもだ」と語気を強めた。ついには「なぜ私を追い出すようなまねをしたんですか」とまくしたてた。

 裁判長から制止される様子を、久美子社長は満面の笑みで眺めていた。

 訴訟で、勝久氏は2008年に大塚家具の株式130万株(全体の約7%)をききょう企画に譲った際に受け取ったききょう企画の社債(15億円分)が、期限の13年4月になっても償還されていないと主張。

 ききょう企画側は「株の譲渡は相続対策であり、相続が起きるまで社債の期限は延長される」などと請求の棄却を求めた。

 勝久氏の狙いは、15億円の支払い命令を勝ち取り、大塚家具の株以外は目立った資産のないききょう企画から株を奪還することだ。3月の株主総会で、久美子社長への支持は61%、勝久氏への支持は36%だった。だが、久美子社長率いる大塚家具の業績が振るわなければ、逆転する芽が出てくると勝久氏サイドはみる。

 大塚家具では、久美子社長が店頭に立ってセールに客を呼び込んだり、久美子社長自身が映り込んだ新CMを流したりしてイメージを刷新中だ。社内でも、勝久氏についた長男ら一部の幹部を更迭するなど大規模な人事異動を実施し、足場固めに余念がない。ただ、15年1~3月期の売上高は前年同期比で2割以上減り、純損益は7億円の赤字(前年同期は4億円の黒字)に転落した。

 勝久氏に近い元幹部は、「業績が上向かないと、勝久氏が社長復帰をめざして再び委任状争奪戦を仕掛ける可能性はある」と話す。訴訟は早ければ年明けにも決着する。劇場化する法廷ドラマ、バトルは続く。

週刊朝日 2015年7月31日号