批判が強かった新国立競技場(提供:スポーツ振興センター)
批判が強かった新国立競技場(提供:スポーツ振興センター)

 安保法案の強行採決に踏み切った安倍政権。歴代内閣が尊重してきた憲法を破壊する暴挙に、怒りの声が上がった。政権は「新国立競技場」見直しで逆風をかわそうとするが、課題は多い。順調にきた政権は窮地に立たされている。

「消費増税とは違い、安保法案は国民の生活に直接関わるものではない。すぐに自衛隊が派遣されるわけでもありません。時間が経てば国民の関心も薄れ、支持率も回復していくのではないか」(自民中堅議員)

 また別の議員も「法案の衆院通過直後に3連休というのは大きい。印象が薄まりますから。9月19日から5連休ですが、参院はその直前に可決させるのではないか」(別の中堅議員)

 時が経てば国民の怒りも鎮まる──。ハナからバカにされている形だが、自民党内で懸念されているのは安保法案の影響だけにとどまらない。巨額の建設費が膨らむ「新国立競技場の建設問題」も立ちはだかる。

 巨額の建設費が世間を驚かせた新国立競技場は、費用が当初の約1300億円から、2520億円へと膨らんだ。最大の原因は2012年の国際コンペで、アーチ2本で屋根を支える特殊なデザインを採用したこと。各紙の世論調査では計画反対や見直しを求める声が7~8割に上っている。

 ただ、安倍首相は五輪招致を勝ち取った2年前の国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、ザハデザインの「新国立」をアピールしただけに、当初は見直しに否定的だった。10日の国会答弁でも「(計画を見直せば)五輪に間に合わない可能性が高い」と後ろ向きだった。

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