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 むし歯治療は、なるべく健康な歯を削らずに美しく修復することを目指して進歩を続けている。治療の現在と今後の展望について、大阪大学歯学部病院口腔補綴科診療科長の矢谷博文(やたに・ひろふみ)歯科医師に聞いた。

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 10年ほど前から、歯科では「ミニマルインターベンション(MI)」という考え方が広まり始めました。直訳は「最小侵襲」、できるだけ歯を削らないという意味です。歯は削れば削るほど、一度むし歯治療をした歯が再びむし歯になる二次う蝕を起こしやすくなります。そこで、歯の鎧であるエナメル質を残そうと考えるようになったのです。

 それを可能にしたのが、接着技術の進歩です。現在の接着材は単に歯と材料をくっつけるのではなく、両者を一体化させます。歯と材料の境目から細菌が入りにくいので、二次う蝕のリスクが低減するのです。

 また、一体化することで歯が補強されます。神経を抜いた歯は弱くなるので以前はクラウン(人工歯冠)をかぶせたのですが、接着材の補強効果で歯が割れなくなり、コンポジットレジン(CR)で修復できる範囲が大きく広がりました。金属は審美性が低く、金属アレルギーを起こすリスクも指摘されているので、材料は脱金属の方向に進んでいます。

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