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 東京都に住む主婦、斉藤宏美さん(仮名・48歳)は、歯が痛くなって昭和大学歯科病院を受診した。右上の第一小臼歯(前から4番目の歯)が進行したむし歯になっていた。歯の根の治療が終わると、クラウン(人工歯冠)を作るため補綴歯科に紹介された。

 斉藤さんを診た副病院長の馬場一美(ばば・かずよし)歯科医師は、保険でできるクラウンについて説明した。

 一つは、一般的な金銀パラジウム合金のクラウンだ。長い間、奥歯のクラウンに使える強度と耐久性のある材料で健康保険が適用されるのはこれだけだったので、奥歯を治すと銀歯になった。

 もう一つは、歯に近い色をしたハイブリッドレジンブロックを用い、コンピューターを使って製作するCAD/CAMクラウンだ。2014年4月、これが小臼歯に限って保険診療でできるようになった。

「ハイブリッドレジンは、コンポジットレジン(CR)にフィラーという無機物の含有量を増やして工場で完全に固めることにより強度を高めたもので、歯の色に近く、クラウンが目立ちません。小臼歯は口を開ければ見えるので、ここに白い材料が使えるようになったことは福音です。斉藤さんもこれを選びました」

 と馬場歯科医師は話す。

 その製作に用いるのが、歯科用CAD/CAMだ。

 CADは、模型をスキャンして読み取ったデータを元に、CG(コンピューターグラフィックス)で歯の形をデザインするシステム。3D画像上で、歯の傾きや上下のあごの関係などをシミュレーションしながら、理想的な歯の形を設計する。

 CAMは、そのデザインどおりのものをブロックから自動的に削り出すシステムだ。ハイブリッドレジンのクラウンを一つ削り出すのにかかる時間は15分程度という。

 CAD/CAMによって何が変わるのか。まずクラウン治療の流れをみよう。

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