西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、今年のオールスターゲームは若手中心で「役者不足」を感じたという。

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 今年のオールスターゲームは、17日に第1戦(東京ドーム)、18日に第2戦(マツダスタジアム)が行われる。各リーグ28選手が出場するが、うち初出場はセ・リーグが12人、パ・リーグが13人。56人中25人だから、半数近くが初出場となる。毎年のように「フレッシュ球宴」などと言われている気がするな。

 10回以上の出場は巨人の阿部慎之助だけ。それだけ世代交代が速いということも言えるが、どこか寂しさを感じてしまう。球宴の顔ともいうべき各球団の主力がいて、そこに若手、中堅が入っていく図式ではなくて、フレッシュオールスターかと思いたくなるような状況だよな。

 昔の話を出して申し訳ないが、10回前後出場している常連選手がゴロゴロいて、ベンチの監督に近い位置で大きな顔をしている。若手が最初に出場する時なんて、どこに座っていいかもわからずに、隅のほうで静かにしていたものだ。いつか俺も……という意識で、回を重ねて5回を超え、年齢を重ねて、初めてベンチに自分の居場所ができてきた。さらに常連選手は本当にアクの強さもあった。結果も残していたし、スター選手の強烈な存在感というものが、球宴の重みをつくっていたことは間違いない。

 今回、慎之助はどう思うだろうな。「若手から刺激を受けたい」という趣旨のことを言うのかな。でも、トップは常に若手から見上げられる存在でなければいけないのは、今も昔も変わらない。その存在を慎之助一人で背負うのは厳しいよ。各球団の主力選手が球宴に出場できる状態を保ってもらいたいよな。球宴の出場回数にはプロ野球選手である以上、もっとこだわってほしいと感じるのは私だけではないはずだ。

 
「球宴=お祭り」をはき違えてほしくない。選手同士の技術をぶつけ合う場であるが、決して「オールストレート対決」ではないということだ。160キロ投げる大谷(日本ハム)ならいいよ。でも、大して速くない投手が、勘違いすることが少なくない。さらに、打たれてもマウンド上で笑っているような投手は「お祭り=遊び」と勘違いしていると思いたくなる。球宴は、ファンが驚くようなハイレベルな対決や技術を魅せる場である。投手であれば、けん制球やクイックもその一つ。真剣さが伴わなければ、ファンに納得してもらえるはずがない。

 私が出場していたころは同じパ・リーグでも鈴木啓示、山田久志ら他球団のエースに負けたくなかったし、ましてセの打者に打たれてもいいとは、1度も思わなかった。プライドのぶつかり合いだよ。捕手に「他球団のエースの配球を盗んでこい」なんて指示もあったことが、今の選手には信じられないだろうな。

 今年は交流戦でセ・リーグが大惨敗した。ぜひ、セの選手は目の色を変えてパに立ち向かってほしい。個人成績だけ見ても中村(西武)、中田(日本ハム)、柳田(ソフトバンク)らパの選手の輝きが目立つ。だが「個の力」はそんなに大差がないことを証明してもらいたいし、時代が変わっても球宴は、見ている者に夢を与え続けないと。

 球宴で得た自信は選手にとっても、後半戦、野球人生につながる。選手が出て良かったと思えるのが球宴だし、球宴そのもののステータス維持にもつながる。

週刊朝日  2015年7月24日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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