ほかにも、騒音防止協定で自粛を申し合わせている夜間飛行訓練が、夜中の3時に行われている実態もある。その騒音は、自動車のクラクションを間近で聞いたときの110に相当する。それでも日本政府は、米軍の約束違反を止めることができていない。

「これは基地問題の本質に触れる部分で、報告書に盛り込まれれば、影響は辺野古だけにとどまりません。米軍の約束違反を日本政府が管理できていないことは、沖縄県内の米軍基地だけでなく、日本全国に共通する問題だからです」(同)

 翁長知事は5月末からの訪米の際、辺野古移設が他の基地に与える影響について、すでに警告を発していた。民主党政権時代の官房副長官で、政界引退後も沖縄問題に関わっている斎藤勁(つよし)・元衆院議員は言う。

「米国が恐れているのは、沖縄が反米・反基地になること。反対運動が辺野古以外に広がってほしくない。翁長知事は秋にも再訪米を計画していますが、そこであらためて沖縄の歴史と現状を伝えるはずです」

 翁長知事、国会議員、那覇市長、沖縄県議らの訪米団に同行したシンクタンク「新外交イニシアティブ」の猿田佐世事務局長は「ワシントン拡声機」を利用することが重要だと話す。

「辺野古移設などの日本政府が実現したい政策は、一部の官僚や政治家が、ワシントンにいる数人の『知日派』に働きかけ、彼らの声を通じて拡声機を使うかのように“米国の意向”として発信されてきました。沖縄はこの仕組みに振り回されてきました。今度は、沖縄がワシントンの幅広い層に正しい情報を伝え、米国から日本に発信してもらうのです」

 翁長知事は7月29日、東京で開催されるシンポジウム「いま、沖縄と本土を考える」(朝日新聞社主催)に登壇する。そこでどのような発言をするのか。安倍政権との対決姿勢を強める翁長知事の次の一手が、明らかになるかもしれない。

(本誌・西岡千史)

週刊朝日 2015年7月24日号