芥川賞作家目取真俊めとるま・しゅん/1960年、今帰仁村生まれ。小説家。97年「水滴」で芥川賞受賞。評論に『沖縄「戦後」ゼロ年』など著書多数。辺野古新基地建設に抗議活動を続ける (c)朝日新聞社 @@写禁
芥川賞作家
目取真俊

めとるま・しゅん/1960年、今帰仁村生まれ。小説家。97年「水滴」で芥川賞受賞。評論に『沖縄「戦後」ゼロ年』など著書多数。辺野古新基地建設に抗議活動を続ける (c)朝日新聞社 @@写禁

 作家・百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさなあかん」と自民党勉強会で発言した問題が、県民の“怒りの炎”に油を注いだ。沖縄在住の作家・目取真俊氏(めどるま・しゅん)は「将来、独立を綱領に掲げる地域政党が誕生する」と予言。沖縄の乱は起こるか。ジャーナリストの亀井洋志が取材した。

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「戦後70年」にあって、辺野古では海底ボーリング調査が強行されています。沖縄県民は過重な米軍基地を押しつけられ、忌まわしい地上戦の記憶を引きずってきました。新基地の建設は、米軍が行う戦争のさらなる継続を意味します。安倍首相は、慰霊の日の追悼式によくも参加できたものです。式典で怒号が飛ぶというのはよほどのことです。その怒りと憎しみの深さを、彼は理解していません。

 政治家が幼稚化しています。百田尚樹氏や自民党若手議員の発言は、安倍首相の本音を代弁しているのでしょう。「普天間基地は田んぼの中にあった」などの暴言は、ネット右翼が拡散しているデマの典型例です。「沖縄の新聞2紙を潰さないといけない」という発言も含めて、この程度の人物が自民党若手議員の勉強会に呼ばれるのは、安倍シンパの言論人の質がいかに低いか、自民党の政党としての劣化を示していると思います。意に沿わない言論は封じ込めるという安倍政権の危険な体質に対して、メディアは強く批判し、抵抗すべきだと思います。

 高飛車な政府のこれまでの対応に、沖縄県民の反発は強まるばかりです。昨年行われた名護市長選、名護市議選、県知事選、衆院選のすべてで辺野古新基地反対派が勝っています。しかし、「オール沖縄」の民意は無視されている。国会は自民党の独裁状態で、辺野古に反対しているのはごく小さな政党だけです。国政の場でまともな議論さえできないのなら、沖縄は自主的な外交権を持つしかない、ということになります。

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