報告書は続いて、中国や朝鮮半島の情勢などを分析した上で、安全保障政策について、さまざまな「改革」を求めている。その中に、こんなことが書かれていた。

<政策の変更は(中略)より軍事的に積極的な日本、もしくは平和憲法の改正を求めるべきではない。集団的自衛の禁止は同盟の障害だ>

 安倍政権がその後閣議決定する集団的自衛権の行使容認をハッキリと迫っている。

 それだけではない。安倍政権が集団的自衛権行使の具体例として挙げている中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡が封鎖された場合の機雷の除去についても、

<ホルムズ海峡を封鎖するというイランの言葉巧みな意思表示に対し、日本は一方的にその地域に掃海艇を派遣すべきである>

 と、まったく同じ方針を述べているのだ。

 自衛隊の活動範囲についての言及も、注目に値する。

<現在、(日本の)利害地域は遠く南へ、そしてはるか西、中東まで拡大している>

<(日米)同盟はより強固で、共有され、相互運用可能な情報・監視・偵察の能力と、日本の領域をはるかに超えて拡張した運用を必要とする>

 周辺事態法から「周辺」の概念を取り払い、自衛隊の海外活動の範囲を地球の裏側まで広げる「重要影響事態法案」の趣旨に、見事に一致するのである。

 報告書の要求はほかにも、安倍政権が進める政策との一致が多い。「武器輸出三原則」の撤廃や「特定秘密保護法」の制定など、いくつかの要求はすでに実現している。

 これでは安倍政権の政策は、まるで米国の報告書の「コピペ」(丸写し)ではないか。元外務官僚の孫崎享氏がこう解説する。

「この報告書はあくまで民間のシンクタンクがまとめたもので、公式な日本政府への要求ではありません。ただ、書かれた内容は米国の国防関係者や軍需産業界などの意見を集約したもので、これに近いことが米政府から日本側に伝えられていると推測できます」

週刊朝日 2015年7月17日号より抜粋