全チーム勝率5割以下――。かつてない大混戦となったセ・リーグだが、どうすれば抜け出せるのか、東尾修元監督がその問題点を指摘する。

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 こんな状況を誰が想像しただろう。セ・リーグ6球団がすべて勝率5割以下という事態が起きた。首位が貯金0。交流戦でのセ各球団の惨敗が招いた結果だが、開幕から快調に白星を重ねていた巨人やDeNAまでが、一気に落ちて大混戦になった。

 巨人は、開幕から低迷する打線を支えていた投手陣が調子を落とした。特に救援陣。沢村、マシソン、山口といった勝ち試合の投手が崩れ、試合終盤の逆転を招いた。DeNAは投打に精彩を欠いたが、特に投手陣は先発も救援も、春先の自信がどこにいったのか、連敗中にはマウンド上で悲壮感すら漂っていた。

 通常のペナントレースだって、球宴までに首位に5ゲーム差前後であれば、後半戦首位争いができる。それが最下位までそのチャンスがあるのだから、気持ちが切れるようなチームは出てこない。どこも決め手もないのだから、大型連勝だって期待できないだろう。混戦はしばらく続くことになりそうだ。

 では、どうやってチームを考えるか、各球団の監督のマネジメント能力が問われる戦いになる。目先の1勝を全力で取りにいく姿勢を選手に植え付けることは言うまでもないが、一方で、監督は頭の中では8、9月の後半戦の戦いに向けて、中期的なビジョンを持ってチームを整備することに腐心する。いつか良くなるだろうとか、場当たり的な起用ではジリ貧になる。主力が疲れているなら、休養を与えたり、思い切った配置転換やショック療法を施すことも必要だ。優勝ラインは下がる。腹をくくった上で、優勝するための逆算の中で、チームをまとめていくことができたチームが最後は上に行く。

 
 整備するポイントで最重要視すべきは、やはりクローザーを含めた救援陣だ。6球団ともに爆発的な打線の力はない。となると、接戦がどうしても増える。救援陣が安定してくれば、勝ちを拾っていけるようになる。同じ1勝でも終盤の逆転やサヨナラ勝ちはチームに勢いを与えるもの。単なる1勝以上の付加価値も出てくる。このコラムでも何度も指摘してきたが、救援陣が安定すれば、先発陣も割り切っていけるし、先発ローテーションにもごまかしが利く。チームが好転する要因になるだろう。

 もう一つ重要なファクターがある。強烈な個の力だ。分かりやすく言えば、エースと4番。エースは、自分が投げる試合はすべて勝つ、全部完投する意識で引っ張ってもらいたい。1週間に1度、勝ちを計算できる試合があれば、大型連敗はしないし、優勝を狙える位置から脱落することはない。エース1人で貯金を10個作ることができたら、それだけでも優勝争いに加われる。巨人の菅野、広島の前田らに期待したいね。DeNAは筒香が三冠王を獲るくらいの覚悟を持ってほしい。強烈な輝きを放つ選手がチームに安心感を与え、軌道に乗せることにつながる。

 近年のセ・リーグは巨人がどこかで抜け出して首位を走り、他球団で2位以下を争う図式だった。巨人からして見れば、全体を見渡しながら、プレーオフも視野に入れてチームをマネジメントできたし、最後はムチを入れずにゴールテープを切っていた。今年は違う。巨人が終盤まで首位を追う展開になれば、ペナントレースは面白くなる。

週刊朝日 2015年7月10日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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