作家の室井佑月氏は、安全保障関連法案に関する審議についてこういう。

*  *  *

 6月19日の国会でも、辻元清美さんはバシッと決めてたわね。

 辻元さんは10日の国会で、菅官房長官に安全保障関係の法案について、合憲とする学者の名を具体的に訊ねた。合憲であるという学者もたくさんいる、と語っていた菅さんは、たった3名の名前をあげた。

 19日の国会で辻元さんは、その3名がじつはとんでもねぇ学者だと暴いてくれた。西修さんは「政府の徴兵制に関する解釈は、およそ世界的に通用しない解釈といわなければならない」といっている、百地章さんは「意に反する苦役に反するから徴兵制はできないという議論は、私は反対であります」といっている、長尾一紘さんは「徴兵の制度と奴隷制、強制労働を同一視する国は存在しない、徴兵制の導入を違憲とする理由はない」といっているというのだ。

 それどころか、非核三原則は要らんとまでいっている人もいるらしい。

 安倍さんを支持するお仲間学者がこうだもの、そのうち「時代が変わった」とかまたいい出して、徴兵制の準備も進めていくんじゃないのかなぁ。悪夢だよ。

 そういや、あたしは前にもおなじようなことを書いたっけ。

 安倍政権の大臣がネオナチの思想を掲げる活動家と写真を撮っていた。安倍首相まで在特会幹部とツーショット写真を撮っていた。そして、このことに対し内田樹さんが、「問題は『そういう人』から『一緒に写真に写りたい人』だと思われているという点にあるわけでしょ」、そう述べていたって書いたんだ。安倍さんを支持するお仲間は、危ない輩ばかりじゃのう。

 
 そうそう話を戻して19日の国会。

 辻元さんは政府の出した安保関連法案は、「砂川判決が根拠か」と訊ねた。合憲だとし、安倍内閣のみなさんは必ずその話を持ち出すからさ。

「昭和47年の政府見解が根拠なのか」とも訊ねた。

「政府は何を根拠として合憲といっているのか!」

 辻元さんは激しく詰め寄った。が、菅官房長官も、中谷防衛大臣も、のらりくらりと話をはぐらかす。

 はっきり根拠を示せば、そのむりくりな根拠が崩され、議論に負けるから。だから誤魔化す。ズルい人たちは考えることがこすい。

 質問にお二人がきちんと答えようとしないから、辻元さんは何度もおなじ質問をした。でも、はぐらかす。そしたら、辻元さんは座ったままで審議を止めた。

 そうだよ。安倍政権の人々は、いつもまともに質問に答えないから、まともに答えるまで毎回、審議を中断させちゃえばいい。彼らが質問にちゃんと答えるまで、我々国民が納得できるまで、審議をつづけてよ。

 だけど、浜田委員長は、「菅官房長官はこの後、記者会見があるんですから」

 と審議を早く終わらせろ、というようなことをいっていた。

 記者会見て、マスコミ用の報告だろ。進まない審議より進んだ審議の報告の方が、大切だろ。違います?

週刊朝日 2015年7月10日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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