電話で話せない障がい者のために、区役所の夜間問い合わせ先にファクスを設置することや、区の広報番組に字幕をつけることを提案した。

 答弁する担当部長は、もちろん肉声だ。しかし音声を文字に変えるソフトで内容を把握してから、追加質問にも挑戦した。

 斉藤氏は今回の質問に備えて、2週間前から入念に準備した。答弁に合わせて臨機応変に対応するため、再質問の内容も10パターン用意したほどだ。

 19分間の質問に、同僚議員は静かに耳を傾け、国会で飛び交うようなヤジは一切なかった。隣の議員は筆談で斉藤氏を手助けしていた。

 質疑を終えた斉藤氏は、

「とっても緊張したけど、終わってほっとしました」

 傍聴席には、兵庫県明石市の泉房穂市長もいた。同市議会にも聴覚障がいのある議員がいるため、議会運営の参考にしようと、駆けつけたという。

 斉藤氏が一石を投じた議会のバリアフリー。議会を確実に変えている。

週刊朝日 2015年7月10日号