死ぬ瞬間を本人はわかっているのか 医師・帯津良一の意見

連載「貝原益軒 養生訓」

週刊朝日

先生! どうやって死んだらいいですか?
山折哲雄、伊藤比呂美著
978-4163900162
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 がん診療とともに、養生にも造詣が深い名医・帯津良一先生(79)と、代表作に『良いおっぱい悪いおっぱい』のある詩人・伊藤比呂美さん(59)が対談した。多くの死の瞬間に立ち会った帯津さんに、伊藤さんが質問した。

*  *  * 
帯津さん(以下、帯):宗教学者の山折哲雄さんとの対談本『先生!どうやって死んだらいいですか』(文藝春秋)のまえがきに「私は死をみつめはじめました」と書かれてましたが、死についてよく考えるんですか。

伊藤さん(以下、伊):昔から死っていうのがやっぱり文学の根本じゃないですか。死とエロスが。ただ、それが以前はファンタジーだったんですよね。ところが、親の死っていうのが近づいてきたら面白くなってきて。母も父も長くかかって死にましたが、その間、死を覗き込んでいたような気がします。

 で、世の中のいままでの人たちはどう考えてきたんだろうと思いだして、お経とかを翻訳するようになって仏教にはまりました。宗教って、とくに仏教って死ぬときにあまりさみしくて怖いから、そのときに菩薩様や阿弥陀様が迎えに来てくれるみたいなそんな考えをつくってきたような気がするんですよね。でも最初は、お釈迦様なんか、そんなこと考えていなかったでしょう。

 先生はお医者様でいらっしゃると、やはり目の前で人が死ぬという経験は多いですよね。それぞれ違いますか。

帯:それぞれ違うけど、私がよく言うのは、死んだ後、みんながいい顔になっていくということです。2、3分で変わっちゃう人も、1時間たって変わる人もいる。

伊:それは死後硬直で?

帯:そうじゃなくて、いい人相になっていく。この世でのおつとめをすませて、来世に飛び立っていく顔ですね。

伊:へえ。私は死の瞬間に興味があるんです。母が死んだときです。仲がいい夫婦だったんですよ。母が父より3年ぐらい前に死んで、焼き場に連れていった日かな、夜、父が寝ぼけているんです。「おーい、死ぬのは痛いかい」って聞いているんですよ。母が何て答えたかは知らないんですけれども。死の瞬間ってどんななんでしょうか。

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