保険は大切だが、下流老人にならないためにすべきことはまだまだあると畠中氏は言う。

「老後に必要なお金は、その人の年間支出で決まるものです。まずは1年分の特別支出の総額を出してください。それは固定資産税や自動車税、冠婚葬祭費といった出費です。月々の生活費は年金暮らしになれば、それに合わせて少なくできますが、特別支出は減らすことが難しいのです。『5千万円は必要だと言われているし……』と一般論で考えるタイプが貧困化しがちです」

 畠中氏は老後の生活不安や将来的な介護施設入居への不安を解消するうえで、即効性があるのは住み替えだと話す。

「ケアハウスなら食費(3食)と住宅費込み1カ月7万~8万円で暮らせるところもあります。70代になって貯金が減って不安になってきたら、ケアハウスへの入居もありですね。また、実際に入居するかしないかは別にして、60歳を過ぎたら見学してください。共同生活が苦手な人もいるでしょうが、下流老人にならないための選択肢は多いほうがいいはずです。介護付き有料老人ホームだって地方に行けば入れる可能性がある。老後の住み替えは情報戦。お金のない人ほど情報が必要なのに、積極的に取ろうとしないですね」

 ケアハウスは原則として自立した高齢者が入居する住まいで、自治体からの補助があるために利用料が安い。例えば、東京23区内にある某ケアハウスでも、収入によって月の利用料は変わるが、7万5310円~となっている。都市部を離れれば、さらに格安のところが見つかるだろう。

週刊朝日 2015年7月3日号より抜粋