必要なのはお金よりも…
必要なのはお金よりも…

 高齢者層の貧困が際立っている。生活困窮者を支援している認定NPO法人、自立生活サポートセンター「もやい」では年間3千人の生活相談を受けており、平均年齢は45歳だが、80歳からの相談もあるという。大西連理事長はこう話す。

「高齢で働けなくなれば、貯蓄を使うか、家族の扶養か、社会保障に頼るかしかない。この2年間で生活保護が増えているのは高齢者世帯だけです。今の若者は非正規労働者が多く、貯蓄ができないので貧困化していく。核家族化も進んでいるので頼れる家族も少ない。将来的に貧困の高齢者が増えるのは必然です」

 高齢者の貧困は、就労困難だけが原因ではないという。

「年間600世帯の入居支援のうち、男性の一人暮らしが圧倒的に多い。高齢になって働けなくなると孤立しがちで、経済的な貧困と人間関係の貧困はリンクしている。両方に対する支援が必要です。そこで私たちは居場所づくりのために交流事業もしています」

 老後にも何らかのコミュニティの中で人間関係をつくることができれば、少なくとも、認知症に気づき始めても誰にも相談できないという状況だけは避けられるはずだ。

 病気や事故により、高額医療費に苦しむリスクは誰にでもある。備えとしては民間の医療保険があるが、もっとも困るのは、働けなくなって収入が途絶えることだろう。そんなときに所得を補償する保険もある。

 損保ジャパン日本興亜や富士火災海上保険が出している「所得補償保険」が有名だが、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏はライフネット生命の「就業不能保険」をすすめる。

「ライフネットのものは65歳まで毎月給付金が支給されるうえに保険料がリーズナブル。ただ、この分野は支払い条件が厳しいせいか、あまり商品が増えていません。住宅を購入する人には、該当する病気になった場合に住宅ローン残高と同じ金額の保険金が支払われる生前給付型の団体信用生命保険が人気です。最近は7大疾病や8大疾病までカバーするものもあります」

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